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一般社団法人日本映画製作者連盟(映連)に対して提案書兼質問書を提出しました

2022年8月8日


一般社団法人日本映画製作者連盟御中

 


日本版CNC設立を求める会(action4cinema)一同


是枝裕和、諏訪敦彦、内山拓也、四宮隆史、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳



「日本版CNC」構想に関するご提案とご質問



去る7月21日に開催された理事会においては、私たちの会のために貴重なお時間をいただいたこと改めて御礼申し上げます。また、その席でも申し上げた通り、昨年2月24日に島谷能成会長に提出させていただいた提言書「日本版 CNC(仮称)発足に向けて 〜映画界の共助システムの構築〜」を受け止めていただき、以後1年以上にわたり貴会事務局における「日本版CNC/KOFIC研究会」を開催し、継続的な意見交換の場をご提供いただいたことについても改めて御礼申し上げます。


同研究会において、私たちは「日本版CNC」設立のために様々な方向から議論を継続してきました。「日本版CNC」の理念および機関の必要性については貴会の目的「我が国経済の振興、芸術文化の普及向上に寄与する」(一般社団法人 日本映画製作者連盟 定款第3条[1])に合致するものであり、理事会においても基本的に理解、賛同を得られているものと理解しておりますが、当初より私たちには「財源の確保が出来ないと困難であり、興収に手を付けることは簡単なことではない」(第2回議事録他)との会長の意向が伝えられており、財源の問題をいかに乗り越えてゆくかが大きな課題でありました。


その後1年4ヶ月にわたり研究会での議論、検討を通じて提案を行ってきましたが、貴会からこの財源の問題に関して解決に向けた具体的な打開策は未だ得られておりません。また、非公式な「研究会」という性質上、ここでの議論の成果が貴会の事業や意思決定にどのように関与するのかも定かではありません。


ご報告した通り、この度私たちは「日本版CNC設立を求める会(action4cinema)」として正式な団体を立ち上げました。これを機に、日本映画の未来を作るための活動を一歩ずつ着実に進めてゆきたいと考えています。つきましては、これまでの「研究会」の議論および私たち独自の検討を踏まえ、改めて貴会に対して提案をさせていただきたいと思います。合わせて同提案の受け止めについていくつかの質問をさせていただきますので、連盟としての正式な回答をいただきたいと思います。お忙しいところ申し訳ありませんが、回答は8月末を目処にお送りくださるようお願いいたします。尚、本提案、質問の内容及び頂いた回答については、幅広い議論を可能にするために公開とさせていただきますので、ご理解、ご了承くださいますようお願い申し上げます。


提案:[日本版CNC]構想の概要


「日本版CNC」の理念や支援項目などについては研究会を通してお伝えしているところですが、今回はこれまで課題であった財源に注目し、構想の概要をお示しし、改めて「提案」とさせていただきます。


[日本版CNC]構想イメージ


[日本版CNC]を運営するための主な財源は以下です。


共助


興行収入の1% 約20億円


配信(放送)事業の収益からトップオフ 約20億円(ヨーロッパ各国で実現されている制度。金額は仮で、①と同額を想定しています)


公助

各省庁の映画支援振興に関する助成金 約35億円(現在バラバラに行われている各省庁の映画支援振興策の助成金等を一元化し、この [日本版CNC]に集約します。但し既存組織との何らかの連携という形態も考えられます)


④ 今回の提案の新しい部分、記者会見でも触れていなかったこの④ですが、映連事務局の方々との話し合いの中では何度かイギリスBFIのような宝くじ財源案が浮上していたのですが、そのほか例えばKOFICのように経済界と連携して基金を作ることによって、その運用益をこの[日本版CNC]に注ぎ込むなど。外部との新たな働きかけによって創出される金額を仮に25億円としてみました。


この①②③④を合わせるとおおよそ100億円規模の原資になります。「簡単ではない」とされる興行収入からの拠出ですが、仮にこの[日本版CNC]構想が実現すると映画業界全体としては川下での20億円の支出が、川上に100億円で戻って来るという、夢のある循環システムを生み出すことになります。


そして芸術文化と経済(産業)、成長と保護のバランスを目配せしながら、「製作」「流通」「教育」「労働環境保全」という4つの支援を柱に100億円の分配の舵取りを映画界自身がしていく。政治や経済に引っ張られ過ぎないように、主導権はあくまで映画の側が持つことが重要であると思います。


コロナ禍において窮地の映画館を救ったのは映画ファンによる寄付でした。この出来事は映画業界が危機的な状況に対応する「共助」の仕組みを持っていないという脆弱性を明らかにしたのではないでしょうか。コロナの禍の影響は今も継続的にあり、大きな負担が現場にのしかかっています。また、未来において私たちが新たな危機に直面しないと誰にも保証できません。この仕組みが業界のセイフティーネットとして機能するためにも、一定規模の原資が必要になるでしょう。


また、例えば現在その運営予算を業界関連団体の寄付によって賄おうとしている適正化機構の運営資金は当然この100億の中から支出されることが可能になり、財源としても公平性と安定性を担保することができると考えます。


この[日本版CNC]の形態については、一般社団法人、公益社団法人、独立行政法人と異なる法人格のあり方が考えられますが、将来的に官と民の資金を混合する観点などから専門家と検討してあり方を決めてゆく必要があると思われます。


以上が、今回お示しする[日本版CNC]構想の概要です。


この提案について、以下いくつかの質問をさせていただきます。各項目について貴会としてのお考えをお聞かせくださいますようお願いいたします。


質問1:[日本版CNC]の設立は必要ですか?


私たちの求めるものは、映画の産業としての持続可能性と芸術文化としての多様性を守り支援してゆく映画専門の振興機関の設立です。今回の提案における財源の問題とは別に、「日本版CNC」のような機関の理念と必要性については、すでに貴会において賛同いただいているというのが研究会における私たちの認識ですが、これは貴会の公式な見解と受け止めて良いでしょうか? この前提が貴会と共有されているのかどうかについて正式な回答をお願いします。


質問2:興行収入を[日本版CNC]の財源の一部とすることを検討していただけますか?


興行収入を財源の一部とすることは簡単ではないことは、すでに研究会においても確認されてきたことですが、配信事業者や関連省庁、経済界の協力を引き出すためには、まず映画業界自らが一体となり主体的に財源を作り出す必要があると思われます。すでに私たちの元に「日本版CNC」に対する配信業者等からの賛同が寄せられていますが、業界自身の努力なしに関係団体や国の支援を得ることはできません。また、業界からの財源の拠出がない場合、「日本版CNC」の運営を映画業界が主体的に行うことができなくなると思われます。


この原資100億円の構想のうち興収以外の80億円の実現を前提にした場合は、興行収入を財源に加える仕組みを検討していただけますか?


あるいはそれは完全に不可能である、というお考えでしょうか? 不可能な場合、その明確な理由についてもご回答ください。あるいは、検討する上で条件がある場合、その旨お知らせください。


また、財源について私たちの構想とは全く違うお考えをお持ちでしたらご教示ください。


質問3:[日本版CNC]の設立に向けて正式な「検討委員会」を設置していただけますか?

1年以上にわたり私たちは貴会事務局とさまざまな研究、検討を重ねてきました。今、私たちは「勉強」する時間を終え、改革へ向けて「活動」する時であると考えます。先に触れた通り、[日本版CNC]設立を推進することは貴会の目的とも合致していると考えます。業界において最も責任ある立場として、今後この問題に主体的に取り組まれることを期待しています。 [日本版CNC]実現のためには法改正など克服するべき様々な課題がありますが、そのためにもこのプロジェクトを貴会の正式な事業として位置づけ(同定款第4条6項に基づく[2])、理事会が正式に任命する構成員による「設立検討委員会」(同定款第51条に基づく[3])を設置して一定の期間内に結論を導き出してゆくことは可能でしょうか? もし貴会がそのように主体的に取り組んでいただけるようでしたら、私たちは微力ではありますが、関連団体や経済界・行政への働きかけにこれまで以上に積極的に取り組んでゆく所存です。


質問は以上です。これらの質問とは別に私たちの構想とは違うお考えがあればお知らせください。みなさまの回答をしっかりと受け止めて、今後の私たちの進むべき道を考えたいと思います。日本映画の未来のために、力を合わせて歩んでゆくことを期待しています。


尚、「日本版CNC設立を求める会」(action4cinema)の活動に対して以下の方々からの賛同をいただいています。



賛同者(50音順)2022.6.14


井浦新(俳優)

石井千晴(助監督)

犬童一心(映画監督)

岩崎ゆう子(一般社団法人コミュニティシネマセンター事務局長)

大高健志(MOTION GALLERY 代表/映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)

岡本英之(映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)

片渕須直(映画監督)

黒沢清(映画監督)

小泉今日子(俳優/プロデューサー)

齊藤工(俳優/映画監督)

坂本龍一(アーティスト/作曲家)

白石和彌(映画監督)

高田聡(映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)

仲野太賀(俳優)

濱口竜介(映画監督/ミニシアター・エイド基金)

水原希子(俳優/モデル)

役所広司(俳優)

山田洋次(映画監督)

行定勲(映画監督)

横浜聡子(映画監督)

吉永小百合(映画俳優)

渡辺真起子(俳優)


以上


[1] 日本映画製作者連盟・定款第3条(目的):本会は、映画文化、映画芸術の振興及び映画事業の健全なる発達をはかるため、映画の倫理的基準を維持し、社会的有用性を高め、映画事業諸般について改善、発展を促進するための方策を立て、さらに日本映画の海外進出を推進し、もって日本映画の振興をはかり、我が国経済の振興、芸術文化の普及向上に寄与することを目的とする。 [2]定款第4条6項(事業):映画事業に係る改善、発展を促進するための方策の検討及び政府関係機関、諸団体との折衝に関する事業。 [3]定款第51条(部会及び委員会):本会は、事業の円滑な遂行を図るため、深い及び委員会を設けることができる。2.部会及び委員会は、その目的とする事項について、調査し、研究しまたは審議する。3.深い及び委員会の組織及び運営に関して必要な事項は、理事会の決議を得て、会長が別に定める。

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